河口慧海著「チベット旅行記」を読んで まず感じたことはこれが明治中期のことだということ。開国後30年程で交通手段も今とは全く違い、国際情勢や治安・情報の量・医療、装備品等を考えるといかに大変な旅であったか想像できる。
- 行動全てが仏教者として仏教探求の強い意志によること
- 語学習得の並外れた才能(俗語を主に子供から学ぶ)
- キリスト教やイスラム教、医学・薬学にも通じる博学
- 厳しい自然環境をむしろ楽しむかのような豪気さ
- 感動したとき、また孤独を紛らわすため等、時々に歌を詠んで悦に入る余裕
- 死に直面してさえ冷静(経を求めに来て死ぬのは本望)
- 万策尽きたときは座禅し瞑想して「断事観三昧」で活路を見い出す
- 釈迦牟尼仏の教えを信じ守り通すことにより幾多の苦難を乗り越えた
- 僧侶として戒律を固く守り通したこと(禁肉食・禁午後食・禁酒・禁淫等々)
- 経を読むことでその代償として宿泊と食事を得るというタフな生き方
- 妨害するものを憎まず相手の立場を尊重 だが「悪」に対しては毅然と非難
- ときに誘惑ともとれる「楽」を退け自己を見失わない強い意志
- 恋愛とは無縁(「婚姻は俗物のすること」と言い放つ)
- 単独行 喜捨は受けるがスポンサーは無し(だから好きにできた)
- 決して迎合することなく自分の意志を貫き通す
- 教義についてチベット高僧を論破する力量と自信
- チベット仏教の現状に幻滅するも客観的冷静にみつめ理想を評論
- 家族や友人を愛し敬い、母国に感謝する姿勢
- 当時の軍国主義下にあっても平和主義を貫く
- チベットでの恩人の危機を救おうと命がけで行動する
- 名誉欲や財産欲・物質欲とは無縁
- 知識的・精神的にはスーパーマン 肉体的にはリウマチ持ちの普通のひと
心打たれたことを思いつくままに列挙したが、ノンフィクションなのに小説よりも面白くて最初は旅行そのものが疑問視されたらしい。120年後の今読んでもスリル満点のド迫力で読者の心を揺さぶる。
*映画化されていてもよさそうに思うのだが・・・
我が国にこのような偉人がいたことを誇りに思う。もっと知られていてもよさそうに思うが、ただ有名になることなど師の本意でないことは確かだ。
*「チベット旅行記」まだ読んでない方があればぜひご一読をおすすめしたい。
■堺生まれの偉人(私の独断)
行基 千利休 与謝野晶子 河口慧海 桂 吉朝(*私の高校の同級生です)